ジョルジュ・メリエス監督『月世界旅行』と、それにまつわる映画史ドキュメンタリー、セルジュ・ブルンバーグ&エリック・ランジ監督『メリエスの素晴らしき映画魔術』を観る。
『メリエスの素晴らしき映画魔術』(2011年/フランス/63min)
『月世界旅行』(1902年/フランス/15.32min)
史上初のSF映画、ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』(1902年)。110年前の映画で、今では当たり前の手法も当時は凄い事だったろうし、最初にやった人にしかもう味わえないものあるんやろうけど。実際の活動は16年間位(当時52歳)。といのも海賊版や模倣が横行(この時代から現在まで、まだ海賊版問題はなくならないね)したことや、観客に飽きられてしまった(当時の世間の趣向が空想めいたコメデイタッチのものから現実のシリアスなものに移っていった)。で、何年後かに、コアな映像作家らに再度発掘される形に。これは、いつの時代のあらゆること芸能人だったり流行りものにはありがちなことで。メリエスは、500本あったフィルムを自ら焼却しちゃうんだけど、後からその文化的、映画史的価値に気付いた人らが現存するフィルムをかき集めて復元。しかも、復元し始め当時は技術がなかったのが近年やっと技術が開発され、今回『月世界旅行』のカラー&デジタルリマスター出来たとのこと。
古いフィルムは材質も悪く劣化が激しく加水分解という巻かれたフォルムがカチンコチンに結晶化してしまうみたいで、それを長時間掛けて蒸したり試行錯誤して剥がしとったり、欠落してる部分は何本か現存する別のフィルムから繋ぎ合わせたり、またバリバリに割れた部分もデジタルで復元され、その技術も労力も凄いね。
で、完成した『月世界旅行』(復元版)を観たのだけど、凄いね。アニメーションもさることながら劇画チックなSFセットがたまらないし、このファンタジー感たまらないね。そして、当たり前だけど、映画って1枚の絵が何枚も連続することで出来てるんだなぁ〜ってあらためて思った。
今、映画のデジタル化、VPF問題で全国のミニシアターの存続が危ぶまれてるけど。メリエスの時代もサイレントからトーキーに、その転換期でも色々あっただろうけど、このVPF問題も何十年、百年経つとガラッと変わってそうだし、メリエスみたくフィルムの貴重さが再確認されたり同じようなことが繰り替えされてく気がするな。
・『メリエスの素晴らしき映画魔術』&『月世界旅行』オフィシャルサイト
・『メリエスの素晴らしき映画魔術』&『月世界旅行』Trailer