SPOTTED PRODUCTIONS主宰【音楽(MUSIC)×映画(MOVIE)の実験室】=「MOOSIC LAB 2012」第2弾。新進気鋭のインディーズ映画監督×ミュージシャンによる劇映画、ドキュメンタリー、アニメーションなど全12作品を観る。
『MOOSIC LAB 2012』
短いものは11分〜長いもので、65分と十二者十二様に見事なものから破綻してるものまで色んなバリエーションがありますね。ドラマ付きPVなものから、ちゃんと映画になってるものまで。どんだけとっ散らかろうが、ストーリーが成立しまいが最後に曲を流しちゃえば良くも悪くもPVっぽくまとめられるなという印象。が、これも関わってるミュージシャンがしっかりした核をもってるからであって。作品によっては、ミュージシャンが勝ってるもの(ミュージシャンのカリスマ性ありき)から、監督とミュージシャンの相乗効果を発揮してるもの、監督の世界観が全面に出てるものとあるね。以下大まかに個人的感想。観た順番に。
●『サマーセール』 岩淵弘樹監督 45min
大森靖子さんのPV(ドキュメンタリー)を撮ろうとして失敗した男の話。片想い。コンセプトが曖昧な状態で見切り発車してしまった感じ。途中で反省・ダメ出しを挟みつつ後半、大森さんの曲でまるく収めている(収められている)。劇中で監督が大森靖子さんに”いつも一人に見える。隣にいてあげたい”と言うが、そんな支えはなくとも大森靖子さんは一人どっしりとたくましく生きてはるし、大森さんへの接し方も何とか威厳を保とうと変に強い口調になったりと、中々痛々しい。こういう片想いの情けない感じは、誰にでも経験があると思うし。映画的に失敗とも取れるが、この監督のヘッポコさの対比で大森さんの凄さが増すので、そういう意味ではPV(ドキュメンタリー)としては成功?なのかもしれない。自転車二人乗りの画が良かった。
・『サマーセール』予告篇
・『サマーセール、その後』
●『お兄ちゃんに近づくな、ブスども!』 内藤瑛亮監督 30min
『牛乳王子』や『先生を流産させる会』の内藤監督。『童貞。をプロデュース』や『おんなの河童』の梅澤くんが出てることもあり楽しみにしていた作品。梅澤くんが出てるだけで面白いし、梅澤くんのことが好きな可愛い妹が梅澤くんを他の女子から守るというシチュエーションがまた凄い。井口昇監督『恋する幼虫』、『クルシメさん』にも通ずる様な部分もあるね。内藤監督作品は『牛乳王子』しか観れてない(『先生を流産させる会』、『廃墟少女』早く関西に来て!)から一概には言えないけど、撮りたい部分だけ撮ってキャラの細かいバックグラウンドはそんなに重要視してないのかもしれないね。ま、短編なのでそこまで細かく描けないし描く必要はないんだろうけど。ホラーだけどギャグ映画ですね。
・『お兄ちゃんに近づくな、ブスども!』予告篇
●『nico』 今泉力哉監督 63min
今泉監督の映画は観たことないけど、今作やTVドラマ『エアーズロック』の感じから山下敦弘監督系のクスッとさせる会話劇系の人なのかな?会話が噛み合なさ具合もイヤらしさがなく結構好きなタイプ。ドラマと劇中劇を境目なくミックスしていて、それがファンタジーな世界観を生むも、北村早樹子さんの曲でドラマ入りPVな感じでまとまっている。曲が入れば丸く収まるのがミュージシャンの凄さと言うかズルさと言うか。それだけの腕があるんだろうけど。今泉力哉監督作品もっと観たいな。
●『恋はパレードのように』 天野千尋監督 50min
森下くるみさんが初脚本をしている作品。紅一点女性監督っぽい繊細な作品(小物やファッションの気の使い方が他の男子監督とは明らかに違う)。SPOTTED701(zine)周辺で平賀さち枝さんの存在は知ってたが、今回初めてちゃんと曲を聴いたけどイイね。映像やストーリー、ファンタジーな感じも平賀さち枝さん(さっちゃん)の雰囲気にピッタリだね。森下くるみさんもカメオ出演してたし、山田真歩さんがえらく大人なキャラで雰囲気がちょっと森下くるみさんっぽかった。平賀さち枝さんの魅力が伝わって良かった。
・平賀さち枝 “恋は朝に” PV
●『家をたてること』 長谷部大輔監督 36min
これ結構好き。他の住民の生活感のない団地(マンション)で遠くで聞こえる工事の音?が『三月のライオン』っぽい(エヴァンゲリオンの綾波レイの家の周辺的な)。起こってるドラマに対して優しい曲のギャップがコントだね。ビックリする展開もあり、36分の中にキレイにコンパクトにまとまっててバランスがいい。子供もエエ表情してたな。長谷部大輔監督の他作品もチェックしてみよ!
・『家をたてること』予告篇
●『ムージック探偵 曲菊彦』 田中羊一&ヤング・ポール共同監督 50min
”ムージック”をタイトルに入れ挑戦的でいい。ただ、おもしろいかおもしろくないかで言うと、微妙かな。けどこれまた、最後曲が掛かると何となくまとまってる風に収まるな。良くも悪くも。オシャレ〜な画的にCMやそれこそPV(1曲分)の尺の方が合いそうな気がするかな。ストーリーどうこうより空気感というか。ラストのシーン良かった。
●『home home home』 手塚一紀監督 50min
4組のミュージシャンのインタビュー+曲の音楽ドキュメンタリー。
プロモーション的インタビューなので、こういう人らがいるんやねくらいで、感想どうこうってのではないね。ムージックのバリエーションの1つな感じかな。やまはき玲さん結構タイプやな。
●『きたなくて、めんどうくさい、あなたに』 吉田浩太監督 11min
11分1カット(16mmフィルムの限界)で撮った作品。曲も1曲入れつつドラマチックな展開で有効な1カットだね。これは見事!の一言。MV(ミュージックビデオ)としても短編映画としても完成度が高い!”映画<MV”の作品(曲やミュージシャンが勝ってる(ミュージシャンを立ててる)もの)が多い中、これは見事に”映画=MV”になってるね。吉田浩太監督作品は、どれも好きです。
●『労働者階級の悪役』 平波亘監督 65min
クラシックなドラマや設定やね。時代背景や国籍(日本なのか日本っぽい国なのか)は謎だけど、監督はこういうクラシックな感じが好きなんかな?と思いつつ。そのわりにギターケースがえらく現代的やったけど。漫画の様な分りやすい展開だけどメッセージ性もあって、これは”映画>MV”とちゃんと映画になってるね。劇中でずっと歌ってた松野泉さん(本業は映画監督)の作品は観たことないけど、気になる存在やね。年齢不詳やけど、調べたら年下(31歳!!)やがな!えらい貫禄やね。映画の質感のせいもあるけど。ビックリ。
・『労働者階級の悪役』特報
●『新しい戦争を始めよう』 竹内道宏監督 50min
フェイクドキュメンタリーで、監督が自分で出てるけど演技が大根過ぎるね。妹役の佐津川愛美さんとの演技の差が激しい。笹口騒音ハーモニカのカッコ良さと交友関係・登場人物の豪華さでもってる感じかなぁ。笹口騒音ハーモニカはカッチョよかった。
・『新しい戦争を始めよう』特報
●『Big Boss』 岩井澤健治監督 15min
キャラクターデザインを大橋裕之さんがやってるアニメーション。ゆるい絵に対して、歌が滅茶苦茶シブくて、そのギャップが凄い!勝(まさる)さん凄いなぁ。これはPVというより、ちゃんと短編アニメ映画になってるね。
●『アイドル・イズ・デッド』 加藤行宏 61min
これ1番好き!アイドルもんかと思ったら、アクションもんやね。
今作でBis(新生アイドル研究会)っていうアイドルの存在を知ったけど凄いね!初めて知ったから和田みささんも実際のメンバーかと思ったら違うんやね。この和田みささんイイ演技するしイイ味出してる!『SRサイタマノラッパー』のTOMさんも出てたし、『SRサイタマノラッパー2』に出てた加藤真弓さん、美人でカッコイイ感じやったけど、今作ではまた強烈な演技してるね。吹っ切れててイイ!Bis自体もアイドルながら(元々メタアイドル的なことをしてるみたいやけど)、可愛さ度外視のパフォーマンスを見せてる(それがイイ)にもかかわらず、ちゃんとアイドル映画としても成立してるのが凄い。短い尺の中で成長するし、感動すら覚える。もちろんガールズアクションものとして成立していて面白い!これはソフト化されたら是非とも購入したいし、加藤行宏監督の『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』まだ未見だったけど、俄然観たくなりました。”MOOSIC LAB 2013”で是非『アイドル・イズ・デッド2』やって欲しいな。渇望!
・『アイドル・イズ・デッド予告篇
と、言う感じでそれぞれ違った味わいがあって面白かったなぁ。出来るだけ種類を観るのがいいね。要注目監督が集まってるし、知らないミュージシャンとの出会いもあってMOOSIC LAB熱いなぁ。要注目ですよ!
・『MOOSIC LAB 2012』
・『MOOSIC LAB 2012』予告編
・『MOOSIC LAB 2012-名古屋?音楽と映画のはらわた編-』予告編
↑噂では京都編も制作中らしいいよ?!