サンプル1(2000年 148×100mm)

なぜ、似顔絵を描かなくなったかという話(1)
僕は以前(5〜6年前)路上で似顔絵を描いてたことがあるのですが、個展をしているとその当時似顔絵を描いた方も来てくださいます。実際に当時の絵を持ってきてくれる方も多く、今でもその絵を大切にしてくれてて凄く嬉しいです。が、5〜6年前の絵を今見るってのは中々恥ずかしいものがあります。女優として活躍してる人が昔のアイドル時代の恥ずかしい映像なんかを見せられるような感じだろうか?もちろん嫌とかではなく、嬉し恥ずかしな感覚だ。僕が似顔絵を辞めてから5年以上になるのだけど(過去の個展で1日だけ期間限定で似顔絵を描いたりしてましたが)、今でもたまに「もう似顔絵は描かないんですか?」と聞かれることがある。そのたびに「ゴメンナサイ。今はもうやってないんですよ。」と答えてるのですが。多分それを聞いた方は、「あぁ、もうイラストとかの仕事してはるから描かはらないんですね。」的な感じで思われるかもしれませんが、そうではない。もちろん、当時「川村淳平って知ってる?」ってなった時に「あぁ、アノ似顔絵の人やろ?」ってイメージがついたら嫌なので辞めたというのもありますが、それだけではない。その、何で似顔絵を描かなくなったかの話をします。下の絵は、当時見本として列べていた絵。ハガキサイズの紙にコピック(筆ペン状のマーカー)で全部描いています。
コピックのインクは、ご覧の通り非常に滲む(にじむ)性質がある。背景やほっぺたなどグラデーションにしたい場合は、その滲みが有効的に働きます。が、諸刃の剣で当然ながら、輪郭線など滲んでほしくない部分も潰れてしまいます。。。なら、滲んで欲しくない輪郭線は滲まないペンで描けばいいじゃんか!となりますが(ま、もちろん今はそうしてますが。)それだけではすまない。深い色を出したい時は何重も何重も塗り重ね(重複?重々複?)て色を出す。絵の具はどっちかというと紙の上に”のせる”(種類や技法により異なるが)という感じだが、コピックはマーカーなので紙に”染込ます”という色の出しかたなのだ。したがって、どんなけマスキングテープで塗ってる隣の面をガードしようが、紙の内部から余裕で隣の違う色の面まで染込んでいきよるわけです。なので現在”切り絵”にしてるのは、それを防ぐためって理由もあるのです。今は切ればいいので、何も気にせず何重も何重も塗り重ねる(重複?重々複?)ことが可能になりました。そういう風に、通れなかった道を何とか違う方法で、違う道で向こう側に行けた時に、新しい技法が生まれるのではないかなと日々思うわけです。

20065221.jpg